みっつめのサインは汗です。
特に『寝汗』です。

 

わざわざ寝汗と書いたのには、もちろんわけがあります。

以前のブログで、
『睡眠は、からだが自発的に健康という資産を作りだせる時間である』
ということを書きましたが、
睡眠中というのは、からだが私たちの支配を離れて、
自らの意思で自由に活動できる時間なのです。

 

睡眠中は、からだは休んでなどいません。
それどころか、自身の平常を保つために、
内部ではたくさんの活動が行われています。

 

しかし、そうは言っても睡眠中ですから、
さすがに食事を摂るわけにはいきません。

睡眠中の排泄は可能といえば可能ですが、
私たちは長年の生活の中で、
「それはいけないこと、恥ずかしいことである」
と教育をしているので、
排泄を行おうとすれば目が醒めるようになっています。

 

そんな中で発汗というのは、
からだが自発的にできて、しかも私たち本人の眠りを妨げることが少ない、
効率的なリラックス方法なのです。

 

消化器系の活動と同じく、発汗もまた
からだのリラックス効果を促進させるのです。

特に、汗腺は副交感神経系の活動と密接に結びついていますから、
「汗をかくと副交感神経が活発になる」
と言ってもいいかもしれません。

 

大事な試験や面接の前、まったく動いてなどいないのに汗が止まらない
という経験はあるでしょうか。

あれは、大きすぎる緊張を抱えて、からだが張り詰めてしまっているのを、
からだ自身がなんとかしてそれをほぐそうと行っているのです。

そして、これこそが『寝汗』と書いた理由です。

 

これもまた以前に、

からだは、自律神経というバランス自動維持機構を備えており、
それは交感神経と副交感神経という2本の手で制御している

といった内容の話をしました。

 

私たちは日々の生活の中で、多くの緊張を溜め込んでいます。

この緊張というのが、私たちの健康を維持してくれている自律神経のうち、
『交感神経』
のはたらきを活発にさせる効果があるのです。

 

そして、交感神経ばかりが活発になってはバランスが崩れますから、
からだは、交感神経が活性化すればするほど、
副交感神経も活性化させようとするのです。

 

お分かりでしょうか。
汗腺は副交感神経と密接に繋がっていますから、
副交感神経を活発にさせようと思ったら、汗をかくのが
からだとしては合理的なのです。

 

試験や面接の前に過度な緊張を感じてしまうと、
交感神経が異常に活性化します。

からだはそれとバランスを取ろうとして、
副交感神経を活性化させるべく、
発汗という現象を起こすのです。

 

 

本来であるならば、私たちは起きているうちに色々な方法を使って徐々に緊張を落とし、
交感神経の活動を穏やかにしてゆきます。

しかし、

『溜め込んだ緊張が多すぎる』

『眠る直前まで緊張状態の中にいる』

こういった状況になってしまうと、
からだは睡眠時間という健康を作りだせる貴重な時間を、
交感神経と副交感神経のバランスを取るためだけに使わなければならなくなります。

 

それは、からだにとって非常に非効率的なことですから、
その時間を少しでも短くしようと、副交感神経を一気に活性化させて、
バランスを取ろうとするのです。

その結果、睡眠中にからだが自由に使える、
汗腺を通じた副交感神経への刺激が活性化され、
大量の寝汗をかいてしまうのです。

 

からだとしてはバランスが取れていいのかもしれませんが、
それで起されたり、寝汗が冷えて風邪をひいてしまっては、
私たち本人の生活が立ち行かなくなってしまうでしょう。

 

からだは、高度なバランス感覚、健康維持能力を備えています。
しかもそれは、自律神経という私たち本人の意思を必要としない、
からだ独自の判断で稼働できる、非常に優れた制御機構によってです。

それゆえに、からだは常に自身にとって最適なバランスを取ろうとするのですが、
それが私たちの生活と噛み合わなくなってしまったときに、
私たちは

『不健康に繋がるストレス』

を、抱え込んでしまうのです。