前回、ストレスとは度を越えた心地よさのことである、という話をしました。
今回は、再びそれを思いの世界へ戻し、精神的ストレスもまた過剰な心地よさであるのかどうか、という話をしてみたいと思います。
一般にストレス……特に健康を害するストレスというのは、こちらの精神的なものを指して言われることが多いように感じます。
学校や職場など、複数の人間が集う場所というのは、やはり物理的にも精神的にも圧迫感があって当然でしょう。
特に、自分の望まぬ場での望まぬ圧迫感がどれほどの苦痛になるかなど、嫌というほどに理解できます。
それもまたすべて、感じ方、捉え方次第なのでしょうか。
その苦痛も楽しいものだ、人生を豊かにするものだと捉えれば、ストレスなど感じなくなるのでしょうか。
端的に言えば、逆です。
捉え方次第でストレスの結果が変わるのではありません。
私たちの感じる楽しさ、豊かさ、苦しさ、貧しさ。
それらすべてはストレスの度合いによって引き起こされるものなのです。
何を言っているのか分からないかもしれないので、順を追って説明しましょう。
苦しいものというのは言わずもがな、望まない場所で、望まぬ圧迫を強いられることでしょう。
では、楽しいものとは、どのようなことを言うのでしょうか。
好きなことを、好きなようにしているのは、楽しいものというのでしょうか。
ニアリィイコール、≒ではありますが、イコールではありません。
楽しさを楽しさとして感じさせてくれているのは、他でもないストレスなのです。
言い換えるなら適切な圧迫感。
さらに分かりやすく言うなら「ちょっと頑張れば超えられるハードル」のことです。
もうお分かりでしょう。
好きなことを好きなようにしているのは、最初は楽しいかもしれませんが、やがて飽きが来ます。
人間とは常に変化を求める存在だということは何度も話をしていますが、それは精神面でもまったく同じなのです。
むしろ、人間の精神、メンタルほど、変化、流動を求めたがるものも、そうそうありません。
好きなことでも、それを続けられるのは、やはり好きの中にも自分の望まぬ圧迫があるからです。
予想の範囲を超えた圧迫があるからこそ、それが僅かな変化を生み出し、その僅かな変化が私たちにとって好きなことを継続させてくれるのです。
ギャンブルにどっぷりハマる人の精神的ストレスは、私たちが学校や職場で抱えるストレスより遥かに大きいというそうです。
そんなに苦しいなら辞めればいいのにと思うのでしょうが、その圧倒的重圧を感じる状態から、勝ち、目標達成という結果を得られたときの解放感がたまらなくて、またギャンブルにハマってしまうらしいのです。
そこまでしてストレスと解放の落差が与える楽しさを味わってみろとはとても言いませんが、少なくとも
『ストレスが健康を害する』
という認識は誤りである、ということが分かって頂けたのではないかと思います。
物理的にも、精神的にも、ストレスとは『圧』のことです。
それが適切なものであれば変化、成長を促し、過剰であれば崩壊を招きます。
苦しみの原因はストレスではありません。
苦しいと感じるほどにかけられた、過剰なストレスです。
楽しさとは好きなことを好き放題することではありません。
好きの中にある適度なストレスが、楽しさを生み出しているのです。
精神面におけるストレスも、肉体面のストレスも根本的には何も変わりません。
ストレスが健康を害する
ストレスが健康を創る
これはどちらも正解であり、どちらも説明不十分です。
ストレスという言葉にネガティブな意味合いを感じ取ってしまうからそうなるのであって、圧、圧力と言い換えればなにもおかしなところはありません。
圧力が健康を害する
圧力が健康を創る
こう表現すれば、なるほどそのとおりだと感じる人も増えたと思います。
さらにそこに、過剰、適切という形容詞を付け、
過剰な圧力が健康を害する
適切な圧力が健康を創る
これなら、誰しも納得できることでしょう。
確かに、現代社会はストレス社会です。
しかし、ストレス社会という言葉を、必要以上にネガティブに捉えないでください。
ストレスとは、ただの圧です。私たちを押し潰すものではありません。
ポジティブに考えるなら、ストレス社会ということは、そこらじゅうに健康のきっかけが転がっている社会とも考えられます。
自分にとって適切なストレスを知り、それを得られる場所を探せば、私たちには容易に健康を創り、どこまでも成長できる可能性がある、ということでもあります。
もちろん、そう都合よく、簡単にそれが見つかるとは言いません。
けれど、探すことを止めなければ、それは絶対に見つかるはずです。
なにせ現代社会はストレス社会なのですから、ありとあらゆるレベルの圧が満ち溢れているに違いありません。
Masaki
