先日、アメリカでは「大豆は体に悪い」「大豆は寿命を縮める」などと言われているということを耳にしました。
和食を愛し、日本の味こそ世界最高の味と思っている筆者としては、容認せざる事態です。
恐らくこれは、和食産業が広まるのを防ごうとするアメリカ政府の方針であろうと、勝手に妄想して、溜飲を下げました。

さて、それからさらに数日経ったある日、たまたまやっていたテレビ番組で、大豆を含む豆類には肥満防止の成分が多く含まれているという内容を目にしました。
確かに思い返してみれば、大豆は昔から「畑の肉」なんて言われるほど植物性タンパク質を多く含む食材ですし、イソフラボンをはじめとする健康によいとされる栄養素を数多く含んでいるというのは有名です。
それが体に悪いなどということはおかしな話です。
やはりこれはアメリカの流したデマなのだろうと、そのときは思いました。

しかしふと、それすらも『からだそのものの違い』によるものではないかと考えるようになったのです。
少し昔の話ですが、ヨーグルトは日本人にとって何の栄養にもならない役立たずである、というニュースがネットに出ていたのを思い出しました。
それを見たところによると、日本人の体にはヨーグルトをはじめとする乳製品を消化吸収する酵素が西洋人と比べて少ないため、乳製品をとっても殆どが吸収されずに体外へ排出されてしまう、というのです。
そういえば筆者が小学生の頃、牛乳を飲むとお腹を下してしまうため、給食の牛乳を飲まずにお茶の入った水筒を持参している子がいました。
当時は、好き嫌いして良くない、なんて悪意の無い偏見で判断してしまったものですが、今にして思えば、その子は体内の異物を排出する能力の高い子だったのかもしれません。
もちろん、ヨーグルトをはじめとする乳製品の価値を下げようというつもりはまったくありませんが、体質的、あるいはもっと大きな括りで民族的に合う、合わないといった価値基準は、やはりどこかにあるのではないでしょうか。

学校給食にパンが出るのは、今では当然のこととして受け入れられています。
しかしその起源を辿ってみると、学校給食を導入したのは戦後の日本の基盤を作った、アメリカのGHQでした。
アメリカでは、定期的に大量の小麦を購入してくれる相手を探していたというらしく、そこにちょうど戦後による食糧難の日本があったというのです。
そこでアメリカ側は、米食を止めてパン食と牛乳(当時は脱脂粉乳ミルクというものですね)をメインにするなら小麦を安く、定期的に支給するという約束を日本と交わします。
こうして、日本の給食にパンと牛乳が定着したのだそうです。
なんだかアメリカを悪しざまに言ってばかりの気もしますが、無論そんな気はありません。誰しも自国が得をするように動くのは当然のことです。
むしろ敢えて悪者を挙げろというなら、日本が経済大国になり、国民の誰一人が餓死することのない豊かな国になった時点でも、未だに貧しかった頃に一時的に決めた約束をバカ正直に守り続け、それを金科玉条のごとく掲げ続けた当時の大人たちでしょうか。
現在では、特産品の地産地消、地元の子供たちに故郷の味を知ってもらおうという取り組みが各地で行われているらしく、地域ごとに独自の学校給食が広まりつつあるらしいです。
売り物にならなかったマツタケを使ったマツタケご飯が給食で出る、なんて地域もあるのだというらしいですから、羨ましい話です。

そう、誰しも先ず自分たちが得をするという目的で動くものです。
先ほどの地元独自の学校給食の話も、子供たちに郷土愛を教えたいとか、地元産業に興味を持つきっかけになって欲しいなど、長期的に見て地域の得になるという目的もあるでしょう。
その考えを今回の大豆の件に当てはめてみると、もしかしたらアメリカ人をはじめとする西洋人は、日本人とは逆に豆類に含まれている栄養素を消化吸収する酵素が少ないのではないか、と予想できるのではないでしょうか。
確かに民族的、地域的にも、豆類から植物性タンパク質を取るのではなく、牛を中心とした食肉によって動物性タンパク質を得ることで成り立ってきたと考えるほうが自然かもしれません。
もしそうだとするならば、アメリカ政府が自国民の健康と食文化を守るために動いた結果、大豆は体に悪いというニュースに繋がったと考えれば納得できる話です。
ということは、そういった食文化の違いによって作られた肉体に差があるのは当然で、アメリカでからだに良いとされる健康法が日本には合わないということも、あって然るべきです。

私たち日本人は、どうも輸入物というか、海外で評価されたもの、というパッケージングに弱いように思います。
それがどういう理屈なのかは分かりませんし、そうでないという人も数多くいるでしょう。
大切な事は、私たち日本人は日本人の視点で、自分自身を見つめる必要があるということです。
食事ひとつとってもそうです。
塩分の取りすぎが悪いからといって、肉体労働でバリバリ汗を流すタイプの旦那さんの食卓から塩気を大幅カットしたら、体調不良でひっくり返ってしまうかもしれません。
またあるところでは、頭をフル稼働するクリエイティブな仕事をする人は、普通の人以上に糖分を欲しがる傾向にあるそうです。
週刊連載で活躍する漫画家さんは、毎日のようにコーラを飲んでチョコレートを食べても太るどころか逆に痩せる、という話を冗談交じりにしていたのを、どこかの記事で見かけたことがあります。

運動にしろ食事にしろ、その人それぞれに合ったものが必ずあります。
十把一絡げの健康法よりも、自分だけのオンリーワンを見つけてゆくことが、長寿社会を存分に満喫する最良の選択ではないでしょうか。
いつか、自分の健康診断自慢ではなく、自分の編み出した健康法の自慢話で盛り上がれるようになると素敵ですね。