前回は、からだの平衡と免疫、という話をしました。

免疫と聞くと、皆さんはどのようなものを思い浮かべますか?
からだの抵抗力、とか。
風邪のウイルスをやっつけるはたらき、とか。
概ね正解です。
私たちの肉体に、ごくごく標準的に備わっている、極めて優秀な平衡を作りだすシステムです。

あれ?と、感じた方は、繊細な感性をしているのかもしれません。

「からだの平衡とは、バランス感覚のことではないのか?」
「免疫がからだ平衡と、何の関係があるのか?」
と。

実は大ありなのです。
私たちニューフィールドでは、健康というものを別段特別なものとして捉えてはいません。
それどころかむしろ、健康というのは、からだにとって『普通』や、『バランスの取れた状態』を示すものとして認識しています。

免疫というのは、からだの外側からやってきた異物や細菌などの影響で、その普通が崩れるのを防ぐシステムなのです。
健康は、私たちが意図して作りださなければならないものではありません。
からだ自体が適切なバランスを取り、自身にとっての平衡を作りだしていれば、それだけで健康は維持されるものなのです。

からだの抵抗力や、老廃物や病原菌を排除する力として免疫という言葉を捉えることは、決して間違っていません。
しかしそれだけではないのです。
からだの老廃物、からだにとって有害な異物やウィルスは、私たちの生活している日常のなかにごまんと存在します。
私たちは常に有害な物質の含まれた空気を吸って生命活動をし、体内に入り込んだ異物によって死滅した細胞という老廃物を作り続けています。
しかし、多くの人はそれで体調を崩したり、病気になったりすることはありません。

その理由こそが、免役なのです。
免疫が円滑にはたらいていれば、そういった異物を取り込んだ端から、即排除していってくれます。だから私たちは、取り立てた苦労をすることなく健康を維持していられるのです。

これが、免疫を平衡と呼んだ理由です。
からだは、良きにつけ悪しきにつけ、常に外部からの影響に晒され続けています。
外部から10の影響が来れば10の力で免疫が働き、100の影響が来れば100の力で免疫が働くことで、からだは常に『健康』という平衡を保ち続けていられるのです。

以前、からだは常に変化、流動を求めるという内容の話をしましたが、その一方でこのようなバランスの取れた状態を好むものでもあります。
ちょうど、遠目から見ると止まっているように見えて、細かく揺れている振り子のようなものでしょうか。

その動きを止められてしまえば、振り子は振り子としての意味を成さなくなってしまいます。
しかし、いつもいつも左右に大きく揺られていては安定感がありません。
そよ風が吹けば細かく揺れ、大風が吹けば大きく揺れる。
そして風が収まれば、中心にピタリと戻ってくる。

健康とは、振り子が中心に留まっているときだけを指す、特別な単語ではないのです。
動くべきときに淀みなく動き、そしてきちんと中心に戻ることができる。
その姿すべてを含めて、健康と呼ぶのです。

花粉や埃などの異物、あるいは細菌をはじめとする、からだの外部からのはたらきかけで揺れた振り子を、反対側から同程度のはたらきかけをすることで、再び中心に戻すシステム。
免疫とは、からだを常に理想的な状態に保ち続けるための、超高精度のバランス維持システムなのです。

そしてもうひとつ。
この免疫そのものが正常にはたらくための、もうひとつの平衡が、からだには備わっています。

からだは、『免疫』という平衡システムと、
その免疫を運用するための『自律神経』という平衡システムの、
ふたつの平衡システムを持っているのです。

次回は、そのもうひとつの平衡である『自律神経』のはなしをしてみます。