病気と風邪

前回、痛みやダルさは肉体が回復しようとしている証である、と紹介しました。

それと同じように、実は風邪をひくというのも、肉体が健康である証拠なのです。

ひとくちに風邪といっても、大きく分けてふたつの原因があります。ひとつは体力、免疫力が低下し、体外から侵入したウィルスに負けてしまう場合。そしてもうひとつは、肉体そのものがより健康であることを求め、敢えて体外からマイナス要素を取り入れ、それを駆除することで抗体を作り、生命力の向上をはかる場合です。

この記事では、前者を病気、後者を風邪と呼ぶことにします。

最近、この病気と風邪が同じもののように扱われてしまっていることが多いように感じます。風邪も病気も一緒くたに扱い、風邪イコール悪いものと決めつけてしまいがちです。

幼い頃に大人から「しょっちゅう風邪をひくのは体が弱いせいだ」と小言を言われた経験があると、大人になってもそのイメージを持ち続けてしまい、風邪は自分の弱さや至らなさが原因であると思い込んでしまう人も多いのではないでしょうか。

確かに、そういった側面もあります。しかし同時に、先んじて小さな風邪をひいておくことで後から来るかもしれない大きな風邪に負けない状態を作っておこうとする、肉体そのものの成長反応というケースもあるのだ、と覚えておいて欲しいものです。

もしそれを知らず、少し調子が悪いと感じたらすぐに風邪薬を飲んで、風邪をひくという肉体そのものの反応を抑え込んでしまったら、肉体が求めている生命力向上、長期的な意味での健康維持が難しくなってしまうかもしれません。

そもそも、歳をとると人間は風邪をひかなくなっていきます。

これは加齢と共に風邪をひくための体力の総量自体が減るからという理由もありますが、わざわざ風邪をひいて能力向上させるくらいなら現状維持を求める、肉体そのものの在りかたが変わってくるからという理由もあるでしょう。

若い肉体というのは、少しでも自分を成長させようという欲求が非常に強いものです。また、自己回復能力も旺盛なため、成長できるのなら少々のマイナスは喜んで受け入れ、さらなる成長をはかろうとします。

しかし老齢になってくると、今ある手持ちの状態をできるだけ目減りさせず、無理なくバランス良く使っていく方向に切り替わっていきます。

つまり、風邪をひけるというのはまだまだ肉体が若く、変化を求めようとしているという可能性もあるのだ、ということです。風邪というだけでなんでも悪しざまに扱い、薬で抑え付けてしまうのは勿体ないことなのかもしれません。

とはいえ、やはり頻繁に風邪をひいていては日常生活に支障をきたしてしまうというのも、また事実です。より建設的な毎日を送るためにも、肉体が自由に風邪をひいてもいい完全な休日、というのを設定しておいてあげるというのも、肉体との良好な関係を築いていく上では大切かもしれません。

もちろん、明日は風邪をひいてもいい日だから、風邪は成長の証だからと言って、わざと真冬の寒空の下に薄着で出かける……なんてことをするのは本末転倒です。それでひくのはきっと、風邪ではなく病気のほうでしょうから。

Masaki