運動しすぎと活性酸素

運動しすぎでヘトヘトになって、逆に眠れなくなる。
こんな体験をしたことはないでしょうか。体験したことが無いなら、こういう光景は想像できますか?

先日、いつもより少し多いかな? と思う程度の運動をしたら、その日の夜に体のあちこちが熱くなって、しかもズキズキと痛み続け、とうとう眠れないほどになってしまった……ということがありました。

運動して疲れ切ったらグッスリ眠れる、というのが普通の感覚だと思います。
けれど、事実としてそれと逆のことが体に起きてしまったのです。
この原因は、なんなのでしょうか。

私たち人間の肉体には、非常に高度な自己回復能力が備わっています。しかし、その能力が優秀すぎるがゆえに引き起こしてしまう弊害もあるのです。

運動をする……つまり、体を動かす、筋肉を使うということは、筋肉を構成するミトコンドリアの動きが活発になる、ということです。

このミトコンドリアは、急激に大きな動きを長時間続けると、活性酸素と呼ばれる物質をたくさん出します。活性酸素とは、たとえて言うなら自動車の出す排気ガスのようなものです。自動車を走らせれば排気ガスは必ず出てしまうものですが、同じ自動車で、同じルートを走ったとしても、一定の速度を保って走るのと、急発進や急ブレーキを多用して走るのとでは、出る量は違ってくるはずです。

これと似たようなメカニズムが肉体にも備わっており、活性酸素の出やすい、出にくい運動というものがあるようです。

さて、この活性酸素ですが、これは細胞の酸化を促進させる物質です。細胞の酸化とは、端的に言えば細胞の死滅です。つまり、細胞の寿命が縮んでしまうわけです。

しかし、人間の肉体は優秀な回復能力を備えていますから、細胞が死滅した分だけ、必要な細胞を生み出そうと活動を開始するのです。

では、この死滅する量が想定していたより多かったら、肉体はどうするでしょうか。

運動を抑え、少しでも細胞をたくさん生み出せる環境を作りだそうとします。この時にプロスタグランジンという筋弛緩物質を生成し、全身を弛緩……感覚で言うと『ダルい』と感じる状況を生み出そうとします。消費よりも生産のペースを上げようとするのです。

また、全身により多くの栄養を行き渡らせるために、普段はそれほど使わない毛細血管まで総動員して、血液の巡りを活性化させます。血行が良くなると体が熱くなる、というのは良く聞く話ではないでしょうか。

最後は、死滅した細胞と活性酸素の処理です。排気ガスがまき散らかされ、そこらじゅうにゴミが転がっていては、道路も通りにくいでしょう。少量ならガスは空気中に拡散して自然に消え去り、ゴミも手で拾えば済むでしょう。けれど大量とあれば多くの清掃業者が駆り出され、特別な機械が使われるかもしれません。

この急速な処理と清掃、回復という工程に、私たちが『痛み』と捉える感覚が引き起こされるのです。

体のダルさ、発熱、節々の痛み。実はこれらはすべて、肉体が自己回復を行っている証拠なのです。

しかし、それも過剰であれば実生活に影響を及ぼしてしまうことは、言うまでもありません。

痛みは回復の証なのだから甘んじて受け入れろ……なんて言われても、なかなか納得できないのが人の性です。けれど、

『ひどい痛みを伴うほどの回復を必要とするような肉体の使い方を、できるだけしないようにしよう』

ということであれば、意外とすんなり受け入れられるのではないでしょうか。

過ぎたるは及ばざるが如し、ということわざもありますから、自分の感覚、欲求だけで肉体を振り回すような使い方ではなく、肉体の感覚や欲求にも耳を傾け、良好なパートナーシップを築けるような使い方を心がけたいものですね。

<Masaki>