皆さんは『健康』というものに、どのようなイメージを抱いているでしょう?
いきなり変な質問だなと思われるでしょうが、このイメージというのは、健康を語るうえで馬鹿にできない要素なのです。
自己暗示による免疫力の向上は、医学的にも一定の地位を得ている学説です。
暗示というのは、言い換えれば一種のイメージですから、このイメージが明確であればあるほど、自己暗示の強さ、ひいては免疫力の向上度合も変わってくるはずなのです。
とはいったものの、この自己暗示そのものの方向性が間違っている、あるいはおぼろげという方が、実は結構多いのではないかと思うのです。
「私は健康だ」
という自己暗示をかければ良いという単純なものではありません。
「では、健康とはなんですか?」
と問われて「健康は健康でしょう」としか答えられないというのでは、自己暗示というにはちょっとお粗末ではないでしょうか。
本ブログで過去に何度も、
「健康とはからだにとっての『平常』を指す言葉である」
と語ってきました。
しかしここでは敢えて、もっと別の、積極的なイメージを描いてみましょう。
『健康とは、私たちが自分の生涯を生ききるための、貴重な財産です』
……途端に、なにやら感情に訴えかけるような抽象的表現になってしまいましたが、これは極めて具体的で現実的なイメージです。
財産という言葉が、少し抽象的なのかもしれません。
なのでこれを『資産』という言葉に替えて、さらに経済学っぽい雰囲気も足すと、こうなります。
『健康とは、私たちが“からだ”という組織を、寿命という期限まで運営していくための資産です』
どうでしょう?
なんだか急にインテリっぽい雰囲気に感じられてきたのではないでしょうか。
では、このイメージが私たちの健康にどのようにかかわってくるのでしょう。
そもそも、同じようなことを言い換えただけで、一体なにが変わってくるというのでしょうか。
大いに変わってきます。
まず、最初に挙げたイメージを見てみましょう。
『健康とは、私たちが自分の生涯を生ききるための、貴重な財産です』
どうでしょう?
健康というのは、非常に大切なもののように感じませんか?
こういうふうに言われると、まるで宝石や、山積みになった金の延べ棒のようなイメージが浮かびませんか?
そして、人生という長い期間の中でゆっくりと、少しずつ減ってゆき、これが尽きたときに寿命を迎える……そんなイメージを抱きませんか?
確かに健康は大切です。
しかしそれは、唯一無二のものでも、後生大事に飾っておくものでもありません。
ましてや、最初に山盛りあって、そこからどんどん減っていくというのは、私たちが求める健康の在り方とは正反対です。
それはまさに『先細りの人生』そのものであり、歳を取れば取るほどに貧乏になっていくということに他ならないのです。
人間というものは不思議なもので、まったくのゼロよりも、一定量あるものが減ってゆく過程に恐怖を覚えるのだと言われています。
昔の戦争では兵糧攻めという戦法がありました。
敵の城を自軍の兵でぐるりと取り囲んで相手の食料の補給を断ち、しかし決して攻撃はしないという戦い方です。
確かに時間はかかりますが、上手く決まれば自軍の兵を失うことなく、相手に「ここに立て籠もっていれば飢え死にするだけだ」と追い詰めることで降伏させることができます。
このイメージはまさに兵糧攻めです。
平均寿命80歳という長い時間、一度の補給も受けることなく戦い切らなければならないなんて、恐怖以外のなにものでもありません。
このようなイメージを持っていては、健康を守ることばかりに必死になって、病気ひとつしただけで貴重な蓄えをゴッソリ削り取られたかのように感じてしまうかもしれません。
こんなイメージで健康に生きようなんて、無理があるとしか思えないでしょう。
では、ふたつめに挙げたイメージはどうでしょうか。
『健康とは、私たちが“からだ”という組織を、寿命という期限まで運営していくための資産です』
いかがでしょう?
なにやら急に重要感が薄れたように思えませんか?
それが大事なのです。
お金は私たちが生きていくうえで、必要不可欠なものです。
しかし、それを過剰に有難がっていては、お金に振り回されてしまうことでしょう。
ちょっとした数字の増減で一喜一憂し、どうやったら大事に抱えていられるかばかりに腐心する人生を、果たして豊かな人生と呼ぶでしょうか。
健康も同じです。
健康とは、増減可能な資産、資金です。
私たちのからだを運営していく過程で、いくらでも増えたり減ったりするものなのです。
必要に応じて使い、使えば減る。
逆に、個人の努力で稼げば増える。
状況に応じて、借りて増やすことも辞さない。
どうでしょう?
とても積極的になったように感じませんか?
仮に大病をして資産が大きく減ってしまったとしても、生きているということはゼロではないということです。
ならば残った資金を元手に、また増やす方法を考えればいい……という発想も出てくるでしょう。
とても大切なものですが、その程度のものです。
健康をお金にたとえる、というまったく同じことをしているはずなのに、表現ひとつ変えただけで正反対のイメージを描けるように思えませんか?
これが、イメージが大事であると言った理由です。
次回は、このイメージをさらに膨らませていく、具体的な例を幾つか挙げていきます。
イメージひとつで健康になれれば苦労はしない……
そう感じている方こそ、ぜひ試してみてください。
最初は違和感や疑問が先に立つでしょう。
しかしある一定の期間を過ぎると、それは確実に私たちのからだに作用してくるのです。