施術者になるハードルは高くない

施術のセンスがないと感じたとしても・・・

前回、施術者に必要なセンスについてお話ししました。
今回も施術者を目指す人に向けてのお話です。
センスの話になると、「でも、私にはセンスがない」と感じる人も多いのではないでしょうか。
センスは必要ですが、必ずしもそれだけでもありません。
白金台「ピタゴラスの手」では、施術者になるためのハードルは、実は、そんなに高いものではないと考えています。
「身体を通して人の役に立ちたい」そう考えていれば、必要条件の半分くらいはクリアしているのです。
残りの半分は、「人の身体をどのように とらえているのか」という、考え方の部分です。
身体は時間の経過に従って、つぶれていくもの、衰えていくだけのものという考え方をしていません。
人の身体に対して、もっと可能性に満ちたものだと考えているのです。
「身体を通して人の役に立ちたい」「人の身体は可能性に満ちたもの」という、この二つの考え方があると、施術を行うときに、目の前に来られるクライアントさんに対して「よいところを見よう」というアンテナが働きます。
よいところを見ようとすることで、よい部分を伸ばし、修正すべき部分や問題を引き起こしているところを改善していく、きっかけにもなります。
結果的に良い仕事につながっていくのです。

技術の基本は、この部分を押さえれば大丈夫

そうはいっても、考え方よりも、技術の習得の方が大事ではないだろうか、という考え方もあります。
施術の世界では、ここ数十年の流れを見たときに、本当に新しいものは意外と少ないものです。
ほとんどの施術は、手や腕を使って叩く、揉む、さする、などの技法が中心です。
どの部分をどのような順番や強さでさわるのかといった組み合わせであったり、同じ動作でもなんのためにそれをするのかという目的や施術のコンセプトの違いによって、まったく違う施術のように見せているものが多くあります。
ですから基本的な動作ができれば、あとは、その実践と施術の考え方を学ぶことでカバーすることができるのです。

考え方が技術の習得よりも大切な理由とは

施術においては、センスの有り無しは、確かにあります。
技術の習得の問題もあります。
ですが、それよりも施術者になる方の「身体や施術に対しての考え方」の方が大切だと考えているのです。

例えば、ケーキ屋さんが「ケーキを食べた人に喜んでほしい」と思ってケーキを作っていたならば、最初の段階で技術は未熟であったとしても、材料の研究や練習をすることで、技術も向上していくことでしょう。
熱意がおいしいケーキづくりにつながっていくのです。
もし、ケーキ屋さんが罪悪感いっぱいな人だったならどうでしょうか。
「砂糖も脂肪もたっぷり使っていて、うちの店のケーキは人の身体に悪い。私はなんて悪いことをしているのだろうか」と思いながら作られたケーキがあったとして、あなたは食べたいと感じるでしょうか。
技術的に優れていて、味もおいしいケーキだったとしても、そういうケーキ屋さんがと知ってしまったならば、あまり、そのようなお店のケーキを食べたいとは思わないことでしょう。

技術よりも先にどのような考え方を持っているのか、人の身体をどのようにとらえているのかが大切だと考えているのは、このケーキ屋さんと同じだからです。
やはり、「ケーキのような身体に悪いものをつくるなんてつらい」と考える人は、ケーキをつくる技術にたけていたとしても、ケーキ職人に向いていないのです。
そして、長くこのように考えてきていた人は、急に方向転換をして、「今日から心を入れ替えて、食べた人に喜んでもらおう」と切り替えても、以前の考え方にとらわれて、なかなか完全に切り替えられるところまでは行きにくいものです。

施術においても、長い時間をかけて培ってきたその人の考え方は、簡単に方向転換がききません。
「身体は機械のようなものだ。」「人の身体は衰えていくだけのもだ」と考えている人は、そのように考えて人の身体に接します。
このような考え方をしている人に、いくら優れた技術を伝えても、いまある考え方がフィルターになって、技術をしっかりと吸収することも難しくなるでしょう。
それでは、よい施術者に育ちにくい、そのように考えているのです。

施術にも言える、「好きこそものの上手なれ」

「身体を通して人の役に立ちたい」「人の身体は可能性に満ちたもの」と考えられる人は、施術の仕事を好きな人だとも言えます。
どのような仕事も好きだからこそ続けられるもの。
施術者も例外ではありません。
長く同じことをやっていると、時には飽きてくることもあります。
それでも続けられるのは好きだから、なのです。

センスの有無や技術の上手さなど気になることがあったとしても、施術の仕事が好きで、それをしたいと考えておられるならば、ぜひ、トライしてみてください。

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